最近困る,花粉症と花粉皮膚炎

この時期になるとスギ花粉が飛び始める。2021年の秋田のスギ花粉は予報では3/5であった。

そうなると気にするのは花粉症の人達。先日も「花粉が・・・」と涙を流しながら目をこする人もいた。そんなときは抗アレルギー薬。CMでもおなじみのアレグラ,薬局でも購入できるが。

医者で処方してもらえば後発のフェキソフェナジンは27.9円,1日2Tなので55.8円,1か月28日だと1562円,3割負担だと468円。診察料,投薬料を合わせても薬局で買うより断然安い,と思う。

元々花粉症でなくても,年をとってから花粉症になる人もいる。花粉症はアレルギーなので感作されれば花粉症になる。感作とはアレルギー物質,アレルゲンに対して自分の免疫が耐性をもつこと。それまでは受容できていたアレルゲンに対して自分の免疫が過剰に反応する。近年言われるのは,皮膚からの感作。特にアトピー性皮膚炎を小児期から持つ人は,皮膚バリアが弱いため容易にアレルゲンが皮膚から侵入し,免疫細胞,樹状細胞やランゲルハンス細胞が豊富な皮膚で免疫反応を起こしてしまう。これは,かのコムギ石鹸で有名になったことなのだが。

一度アレルギーになってしまうと治すのは難しい。最近は舌下免疫療法といって,アレルゲンを少しずつ摂取しながら免疫を慣らす,免疫寛容(トレランス)を獲得する方法もあるが,これも時間がかかるようだ。花粉症になるかどうかは人次第・・・かつてアトピー,喘息,アレルギー性結膜炎,鼻炎持ちのアレルギーマーチの私も花粉症はなぜかかかっていないが,今後どうなるのか・・・。アレルギー体質というか,病気の体質は基本的には遺伝子の問題であろうが,環境要因も重要であろう。スギの離散する地域であればアレルギーになってしまうとか,逆にアレルゲンが豊富な環境にいればトレランスが起こってアレルギーにならないとか。

花粉症とともに最近問題になっているのが花粉皮膚炎。基本的にはアレルギーだが,花粉症とはアレルギーの性質が違う。花粉症はⅠ型アレルギー,急性なので花粉に対してすぐに症状が出現する。蕁麻疹と同じ。花粉皮膚炎は基本的には接触皮膚炎,かぶれなので4型アレルギー,遅発性のアレルギーで,薬のアレルギーなどのように,アレルゲンの曝露から症状出現まで2,3日かかることもある。

接触皮膚炎も刺激性と免疫性とある。前者はその物質の構造による刺激,例えば毛虫皮膚炎のような針みたいな物質が突き刺さる刺激によるもの。後者はその物質の成分,タンパクなどのアレルゲンに対して免疫細胞が反応すること。花粉皮膚炎は後者だと思うが,近年花粉症や花粉皮膚炎が増加している背景にはどのようなものが考えられるのか。

一説には清潔な環境になってきているから,アレルギーになりやすいということも言われる。田舎など不潔な環境で育っている人はアレルギーになりにくい,とも言われる。しかし近年の問題はニュースやテレビでも見るのだが,花粉が狂暴化している,ということ。

花粉が狂暴化する,アレルゲンの構造が変わってきている,ということも考えられる。進化の過程で花粉の構造がヒトに対してアレルギーを持つようになってしまったのであろうか。あと言われることは大気汚染の問題,特に中国での大気汚染は度々ニュースでも耳にするが,pm2.5なるバリアを通過してしまう汚染物質が増えているという事実。そこで破壊された免疫環境が花粉に対しても過剰に反応しているとか・・・これは不確かであるが。

花粉症に対しては抗アレルギー薬を内服すればよいが,花粉皮膚炎に対してはどう対処すればいいのか。接触皮膚炎の治療のファーストチョイスは,接触源を避けること・・・基本的には花粉の時期が過ぎるまで待つしかないのが現実。皮膚のバリア機能が弱った状態だとモロに曝露されるため,炎症,湿疹などが起きている皮膚に対してはしっかりロコイドなどの弱いステロイドでしっかりと皮膚を治しておくことが重要であろう。湿疹の起きている皮膚はどんどん悪化する,負のスパイラルに陥る。

ステロイドの負の側面がよく言われる。皮膚が薄くなるというのは事実であるが,弱いステロイドを短期的に用いるのであれば問題はない。感染を惹起することもあるが,いわゆるニキビや化膿することもある。眼囲については緑内障のリスクもあるので瞼に長期連用することは避けたい。ステロイドを避けるため,タクロリムス,プロトピック軟膏を使うのが良いと言われるが,アトピー性皮膚炎にしか適用がないが。ちなみによく言われる色素沈着は,炎症が強くて基底層のメラニンが真皮まで落ち込むことでつくシミ。ステロイドのせいではなく,炎症が強いためなのでしっかりと早めに治療することが大事である。

皮膚をバリアするためには保湿も大事であろう。角質などのセラミド,油分が減少してカサカサになると皮膚バリアが弱る。保湿剤といえばヒルドイドなどがよく用いられるが,弱った皮膚に対してはワセリン,プロペトがいい。特に小児や酒さ,いわゆる赤ら顔の状態ではワセリンを勧める。ベタベタ,テカテカするのが本当に嫌だが。そういう人は家にいるとき,夜だけ外用してもらう。ヒルドイドや普通の保湿剤はローションやクリームが多く,ワセリンなどのいわゆる軟膏基材と比べて刺激が強いのだ。弱った皮膚に対してクリームなどを外用するだけで「ヒリヒリする」と訴える人は多い。ワセリンは本当にただの脂。皮膚から出る脂同様,基本的には薬ではない。薬局でも売っている。プロペトのような純度の高いワセリンのほうが,伸びはよいので好まれる。薬局には花粉をバリアするスプレーみたいなのも売っているが,アレがどれほど効くかは正直知らない・・・。あとは服についた花粉を家に着いたらきちっと払ったり,外に干した布団などをしっかり叩いて花粉を落としたり,掃除機で吸ったり,という生活環境中の改善も好ましい。

なお,顔が腫れる,といったタイプのアレルギーもある。いわゆるクインケ浮腫,血管性浮腫であるが蕁麻疹の1種である。遺伝的な問題もあって重度な人もいるのだが,顔が腫れる場合に一番問題になるのは粘膜,気道が腫れる人もいるのでヒューヒュー鳴るような呼吸苦が生じる場合はすぐに病院で治療したほうがよい,いわゆるアナフィラキシーだから。顔面の中でも瞼だけ腫れるという方もいる。瞼は顔面の中でも最も皮膚が薄いからである。瞼だけ腫れる場合はクインケ浮腫の場合と,花粉皮膚炎と,どっちもあるだろうが。クインケ浮腫についても蕁麻疹に準じて抗アレルギー薬の投与なのだが,普通の蕁麻疹に対して効果が弱いこともよく経験する。そういう場合にはトランサミンを用いることもある。扁桃炎などのノドの痛みをとる薬だが,案外効くこともある。基本的には抗アレルギー薬で十分だと思うが。

抗アレルギー剤の連用についてはあまり副作用もないので,不快感を抑えるためにはしっかり使ったほうがよい。慢性蕁麻疹のガイドラインにも症状が出ない用量で,1か月しっかりと内服して症状が出現しない時期を確保する,などとある。